『ファーストインプレッション』
「一目惚れ!?ああそうさ一目惚れさ文句あるかよ、
だって仕方ねぇだろ好みの顔だったんだからッ!!」
赤毛に負けない程に赤くなった顔で怒鳴られた。
己こそ相手に負けない程に赤い自覚はあったが。
『手持ち理論』
事実の理論負荷性の概念、というものがある。
事実は理論があって初めて捉らえることが可能、という考えだ。
レントゲン写真を見たからといって、素人さんが病気を判別できないのと同じ。医学という理論を持たない素人には、医者の様に人を救う術は無い。
同じものを見ていても、感じ方は人それぞれ。全ての人間が同じ見解・理解に至るわけでは無いのだ。
「──以上を踏まえた結果、俺が好きだというおまえの理論は、俺には理解不能なので、その気持ちには応えてやれない」
するとギギナは少し考えて、そして至極真面目な顔して宣った。
「それは当然であろう?貴様が好きなのはガユスではなく、私なのだから」
X'mas企画@ 『人物紹介』
サンタクロースなる人物の説明をした。
「つまり、その老人は不法侵入者か」
「ああそうだな、つまりおまえと同類ってことになる」
「何を言う、それは貴様のことだろう」
「ここは俺のテリトリだ!!」
※ガユス自宅
X'mas企画A 『聖夜晩餐』
嫌いなもの、嫌いなもの。
ギギナの嫌いなもの嫌いなもの。
まさか趣味の料理中にこんな呪詛を延々と吐き出すことになるなんて、昨日、ギギナに昼食を作らされた時以来だ。
「肉ニクにく…と」
タイムサービスの牛肉。は。
赤ワインで香り付けをしてやろう。加熱でアルコホルは飛ぶけれど、あの野生児は敏感だから顔くらいは顰めてくれるに違いない。
「ええと、前菜は、」
思いっきり菜っ葉と葱にしてやろう。ハムも果物も芋も程々、マヨネーズもドレッシングも控え目。
あいつは生野菜を目の仇にしてるから、とことんまで野菜にしてやる。
視線で訴えたり、さり気なく俺のほうに皿を押しやってきたりしたら、
「ギギナ、めっ!」
って言ってやろう。
厭味以外の何様でも無いけれど、正論以外の何者でも無いから、単純明快なあいつはきっと直ぐには反論が思いつかないに違いない。
その不満顔を肴にワインを喉に流すのも悪くない。
「鍋がいるな」
スープはどうしようか。
イベントらしくミネストローネもいいかもしれない。
けれど赤ワインでは牛肉と被ってしまうし、第一それこそ本当に野菜ばかりになってしまう。
そういえば先週、コーンペーストを買い入れた。甘さの為に、コーンスープにしよう。
賞味期限の近いパスタもあったはず。
収納庫から輪ゴムで口を縛った使い差しの袋を取る。
以前、台所にまでやってきたアイツがパスタケースを割ったから、仕方無しに袋のままで保存したそれ。
重さから二人分も残って無いけれど、別にいい。
あいつが今夜、ここに来た目的はわかってるから。
「‥‥あ、そうだ」
野菜サラダの上にはこれみよがしにチーズを乗せてやろう。
どこかのピザ屋の歌い文句じゃ無いけれど、7種のチーズでギギナが好きな濃い味のヤツを振りかけてやろう。
肉に手を伸ばしつつもちらりと横目で生野菜の存在を確認し、そしてその上のチーズを発見したギギナを想像して俺は小さく吹き出した。
(07.2.15)