『プロローグ』
 ※ギギガユのパラレル。大学生な二人の話





「あんたって、俺より一つ年上だよな?」


右手に握った黒鉛で乱暴に紙を擦るのを止めて話し掛けてみた。
間が持たない、というのが大きな理由。
だが俺個人がこの男に対して少なからず興味があったというのも否めない。

俺は日の光を浴びながら芝生の上でデッサンに勤しむ相手を眺めた。
―――確かに、顔は良い。
一見しただけでは男か女かわからないその外見は描き手に左右される。
外見・描き甲斐共に絶好極まりないモデルだろう。

俺の問いに相手は手も止めず顔をも上げずに声だけを返してきた。


「それがどうした」
「なんでこの回生にいんの?」


俺の大学は取得単位数に関わらず落第することはない。
単位に関わらず取敢えず最高回まで積める。そして規定単位に足りなければ到達するまで留年するというシステム。
だから通常、浪人でない限り年違いが同じ回生で授業を受けることはない。

それなのにこのギギナという男は留年していた。
そんな異分子たるギギナの留年の理由についての憶測が、5月に入った今の時期、俺たち現役組の中ではよく話のネタにと上っていた。
実は身体に合わず病弱だとか、同回生と揉め事を起こしたとか、―――女講師に手を出した、とか。

自分で振っておきながら少なからず緊張していた俺に対して、しかしギギナは事も無げに口を開く。


「留学していた」
「留学?」


予想だにしない答えに素っ頓狂な声が出た。


「留学…って、絵の?」
「音楽」
「…ここの専攻、美術だけど?」


訝しげに返すとギギナは手元を見ていた顔に一瞬だけ顔に動揺のような色を浮かべたが、すぐにいつもの無表情に戻った。


音楽、って言った。
確かにうちの大学には音楽専攻がある。留年制度も設けてるって聞いた。

(……でもそれって確か、選抜制でじゃなかったっけ?)

誰でも参加できるわけじゃない。
相当の実力がないと無理なはず。
でも今ギギナがここにいるって事はつまり、音楽からは離れてしまったということで。





「なにか言いたそうだな」
「―――え?」


掛けられた綺麗な声に思わず顔を上げる。

初めて合った銀の双眸。
彫像のような手を止め真っ直ぐに俺だけを見る銀瞳に気圧されて、俺は目を逸らしてしまった。
そして行き場を失った青い視線はギギナの太腿の上に乗ったスケッチブックに留まり―――固定された。


「………取敢えず」




専攻先を美術に選んだ理由が聞きたい。



comment:続かない






『紅茶物語』




400より少し多めに汲みたての水を沸かす。
それが沸騰したら紅茶ティーバック2つ分、袋を切って葉だけを入れて弱火3分掻き混ぜないでのんびり煮出す。

その後ミルクを400入れてまた弱火で煮出し、沸騰直前に火を消して蓋。
3分蒸らして茶こしで茶葉をこしたら出来上がり。




「そしたら量が多過ぎたからお前にもやる」

「今日はなんだ」

「ロイヤルミルクティー。 葉はゴールデンアッサム」

「砂糖」

「各自お好みでどーぞ。 因みに事務所には上白糖しかありません」



comment:800ccもミルクティー作ったのは私です。(余る)






『イメージ』




見上げると ひらりひらりと舞い来るそれは 汚れを知らぬ白い色

前を向けば ちらりちらりと散り逝くそれは 曲がらぬ誇りに至高の色

時に戦場という名の季節に 赤い花をばら撒いて




「…あ、雪だ」

「良かったなガユス、これで貴様の餌には当分事欠かん」

「空気シロップがけの酸性雨製かき氷が主食の野蛮な戦闘民族と一緒にするな」





ふわり地に着き すっと黙して解けたそれは 儚く消えるあいつの色


comment:「ギギナ=銀・白色=儚い・消えそう」の方程式はかぼちゃひつじの基本スタンス






『言わない言葉』




「眼鏡」

「…何…俺、今気分最悪なんだけど」

「年が明けた」

「…そっか」

「そうだ」
「じゃあ…また、糞ったれた年が始まるな」




宜しくの挨拶は言わないよ。

いつか言えなくなるのが辛いから。



comment:それに「よろしく」なんて柄でもないし




(06.8.6)