『お鍋をしよう@ 準備編』
「鍋をするのはいいんだけど」
「なんだ」
「何で鍋から買うの」
「道具は必要だろう」
「いつもの土鍋でいいだろ。何でわざわざ電気鍋」
「中身がなくなる毎に土鍋を持って台所の火場へと席を立つのは面倒だろうが」
「席を立つのはお前じゃなくて俺だろうが」
「席を立つのは面倒だろう」
「だーかーらー!準備支度はお前じゃなくて俺がしてるだろうが!!」
「だから面倒だろうと言っている」
『お鍋をしようA 食事編』
「別に鍋は嫌いじゃないんだけど」
「なんだ」
「お前とやると肉だらけだよな」
「何か問題あるのか」
「問題っていうか。あ、こら、そんなよそい方じゃ机が濡れるだろ」
「知らん」
「ほら零れたっ!」
「仕方が無い」
「俺がよそってやるから器貸せ」
「断る」
「いいから」
「いらぬ」
「…ギギナ」
「…なんだ」
「お前、実は野菜嫌いだろ」
『お鍋をしようB 蛇足編』
「ギギナ、それ白菜」
「知っている」
「そっち葱」
「だから何だ」
「…別に。(味がついたら食べるんだ…)」
『コトバアソビ』
「先か後か、どっちがいい?」
それは要点を省いた問
それでも伝わる問
「今度は何の言葉遊びだ?」
「ガユス君の素敵素晴らし人生設計改革」
「軟弱な眼鏡より先に私が死ぬことなどあるはずが無い」
「俺が聞いてんのは相対的可能性じゃなくて、個人的希望」
「聞いてどうする」
「自己満足?」
「また下らない夢でも見たか錬金術師」
「夢見るドラッケンも素敵だな」
笑って離れる瞳には哀しい陰り
抱きとめれば「いたい」と言った青空が雨を降らした
『誰』
「…なぁ」
「なんだ」
「あのおねーさん誰?お名前は?」
「知らぬ。以前一度遊んでやっただけだ」
昔 遊び
「…ふーん…」
「嫉妬か?」
からかい混じりの嗤み
「そうだって言ったら?」
僅かに跳ね上がった眉
「…少しは可愛げのあることを言うようになったな?」
からかい混じりの笑み。
「俺は?」
「今の貴様は私の」
相棒 恋人 女 只の性欲処理道具
聞きたいけど聞きたくない言葉は耳に入れずに飲み込んだ
そしたら確かに跳ね上がった眉
―――誘ってんだから気付け、馬鹿。
(06.8.6)