『彼の言う悪って何だい?』
『何を基準にしているのかもわからないじゃないか』
『間違った方法で手に入れた結果に、意味なんて無いから』
『一方通行の自己満足だよ』
「俺はああするしかなかったんだッ!!」
──嗚呼、そうか
彼もそうするしかなかったんだ
君と僕とは似た者だった
「正月?」
「そ。新年を祝うんだ」
ブリタニアにも似たようなもの、あっただろ?
日本のとは、ちょっと違うかもしれないけど。
「今年の初めは」
「う、それ‥は‥まあ、あれだ、そうだ、夏。今はだから、あと半年後」
それは蝉がうるさい季節から二つ進んだ季節の行事だと朱雀は言った。
個人主義な少年だが、意外と饒舌だ。喋るのは嫌いではないようだった。
「正月用の挨拶もあるんだ」
「どんな?」
「教えない」
思いもしない返答に紫暗の瞳がぱちくり、と瞬いた。
普段、几帳面で大人びたところのあるルルーシュのそんな仕草が可笑しかった。
我慢できずに笑ってしまえば、むっとしたルルーシュが「馬鹿」と言って拗ねている。
それが更に朱雀の笑いを助長させた。
「ごめん、ごめん」
漏れる笑いを必死で押さえて、取り繕う言葉を探す。
相手のご機嫌を伺うような真似など、ルルーシュに出会うまでしたことがなかった。
「正月が来たら、俺から言うよ」
「何故今じゃ無いんだ」
「楽しみって、取って置くものだろ」
納得いかない、という表情がルルーシュの顔にありありと見て取れる。
「‥‥本当だな?」
けれど次に楽しみがあるのは悪くはない、と思い直す。
“いつか”来る“次”に想いを馳せるなど、したことが無かったから。
「ああ。半年後、ルルーシュに一番に言う」
そう言って笑い合った、あの夏の日。
7years ago
(07.2.15)