幼きあの日からずっとずっと。



偉大なる祖先・大天翅と神々との大戦。神話。死力の限りを尽くした戦。
幼いながら、自分の思考を掠め乗っ取るのは遠き先祖の長き歴史であった。

当時を探る資料は殆ど残っていない。
強いて挙げるなら最長老。当時を唯一見て知る生きた資料。
けれど彼はいつも優れた過去しか語らない。汚点や敗北の過去には蓋をし、興味が無い。

だから彼の話には興味が無かった。

自分が知りたいのはそこではないのだ。
強大な神々を相手取った戦いは当然一筋縄ではいかなかった筈。
当時を記すものが何も無くても語り語りで引き継がれ、誰もが知っている出来事。
長い歴史、手段は口承のみにも関わらず、口を揃えたように変わらぬ内容。
争いの規模としてもその犠牲の数としても、大きな出来事だったことは確かなのだ。

神とはどのような存在だったのか。
戦略は?能力は?規模に基地、組織としての形態図はどのような?
そして総合的に見たとして、いったいどれ程の強者っだったのか。
彼ら相手に天翅族は、どんな戦いを繰り広げ力を用いて勝利したのか。
己が知りたいのはそこなのだ。

泥に塗れていて構わない。
華麗な手引きでなくて当然。
薄汚くて大いに結構。

今の天翅の翅の力だって、素を辿れば偶然の産物を遺伝子操作で無理矢理復元し、特化・強化した能力。自ら勝ち取った力ではない。
今でこそ皆使いこなせているものの、そんな偶発の付け焼刃が果たして当時、どの程度戦力と成り得たのかは甚だ疑問だ。

しかし答える者はいない。
ならば自ら導くまで。
そしてたどり着いた答え。


禁断の翼 機械天使アクエリオン


天翅ではなく天使
翅ではなく翼を持つもの
大天翅らが持てる技術のすべてを駆使してゼロから磨き、造り上げた力

生命の樹の根に眠るその翼。
初めて目にした時は感嘆のあまり口から吐息が漏れた。
そして背筋を走った戦慄。尖る神経。怨念という残響に身震いした。


己が知りたかったのはこれだった。
これこそが答えで、そして憧れた高みであった。

この翼ほどの力が欲しい。
強く。
そう強く、強くなりたい。
闘って闘って己を磨き、誰よりも何よりも強く。
それはきっと至福の道程に違いない。
天翅の歴史の始まりの意味。
強大なる神々との戦いに幕を引いた、追随を許さぬ絶対の力が欲しい。

己が示すその意味は、大切な者を愛しい者を守る翼


『見ていてくれ、頭翅』




幼きあの日。
自分はその情熱を最も捧げたかった天翅に、翅の誓いを立てて契りを結んだ。







true end
フラグを避けて優しいルートを歩んだ日