――英雄は 墓の下にしかいない。


「おまえを俺の墓標にする」

言ってくしゃりと髪を混ぜてやれば、鬱陶しい、と払い除けられた。

「意味がわからない」
「いいさ別に。わかられなくたって」

それでいい。今は。

「いい天気だなー」
「雲しかない」
「明日は晴れかもしんねぇだろ」
「予報は雨だった」



おれは、君を遺こして逝くと決めた。

生涯君が忘れぬように、その身に刻んで逝こうと決めた。
我が名、君に刻む
遺される辛さを知ってるおれだから、君に (ロク刹)
『ティエリア・アーデとアレルヤ・パプティズムの』
『三分クッキング!今からぼくら二人が早い・素早い・スピーディ!で簡単なそれなりの料理を紹介します』
『俺は徹底的にやらせてもらう』
『えっとティエリア。今日の献立は何だっけ?』
『そんな事も覚えていないのか。君には進行・調理者としての資格が無い』
『番組から降ろすのかい?でも今のはティエリアに話を振れって指示が出たからだよ』
『‥カンペ‥命令には従おう』
『では改めて。今日の献立は何だっけ?』
『余ったムール貝でプリン・ア・ラ・ムールを作る』
『ぼくは生クリームよりチーズが良かったなぁ。マルチーズ』
『黙ってろ筋肉ダルマ』
『それじゃ番組にならないよ‥‥ダルマって何だい?』
『球体が二つだ』
『ハロが二体ってこと?』
『基本形態はそれを重ねた二頭身像だ』
『スノーマン?』
『あと頭部は滑らかで光沢がある』
『なんだ、ロックオンか』
『解決したな。落し蓋とガスバーナーの用意は?』
『出来てるよ』
『ではミッションを開始する』
『あ、ティエリア。もう番組が巻きに入ってる』
『何?まだプリン・ア・ラ・ムールは完成していない』
『ドンマイ?』
『時間配分はどうなっている。責任者は誰だ?万死に値す、』



エンドロール(この番組は太陽光発電を応援するユニオンの提供で全国にお送りしました)


「「‥‥」」

「言わなくていい、ロックオン」
「‥刹那?」
「あんたの言いたいことはわかってる」
「!!‥せつな‥!」


「ムール貝は余らない」
「ごめん、そこじゃないんだわ」
ミッション☆アンコンプリート!
恒例ゲテモノ番組 (マイスタ)
親を殺されたあんた
親を殺した俺


「刹那」


殺戮者が憎いと唸ったその口で、あんたは今日もそいつに好意を囁く
集合
知らなくったって愛せること、知ってたって愛せること
それを知らない二人の話 (刹ロク)
テロが憎かった。

「‥おまえもか」

赤銅の瞳は揺るがない。
向けた銃口、その標準も揺るがない。許せない。

「おまえもなのか」

憎かった。
テロがどうしようもなく憎かった。

「何か言えってッ!!」


いつの時代も、おれから全部を奪うその行為が。
薔薇獄乙女
君に寄せるこの感情が 愛か憎しみか 答えは必要ですか?
だから君は、浜辺で強情に口を閉ざしたというのに。
(刹ロク)
テロが嫌いなのか
テロが憎いのか
テロが敵だと思うのか

だから狙うのか
そして殺すのか
そうして死という罰を与えるのか

そうやって、前置きしてから殺すのか
そうやって、あんたは引き金を引いてきたのか
そうやって、あんたは今まで、

「テロリストだと聞けば、無差別で相手を殺してきたんだ」

掲げた理念を何一つ知らず、平等に。

「さて、ここで問題です」


今のあんたと昔の俺。 その違いを述べてみよ。
神が下す罰と鉄槌
神の代行者を気取るその行為 (刹ロク)
「おまえも、テロリストだったんだな」


こうやっておまえも、衝撃を覚えてくれるのだろうか?

やがて来る、その時は。
ベトレイヤー
ロックが裏切ってた時用 (刹←ロク)
『そんなことをしても、ご家族は喜ばないわ』


そんなことは、わかっている。

だからこれは、自分のため。
憎悪を断ち切ることのできない、愚かな自分のためなんだ。
空虚
テロが憎いと叫んだのは、おれだけだ。 (ロックオン)
2008.02.13  わたぐも