おまえがおれを愛してくれてたのは知ってるよ
でもそれは恋じゃあなかった
それは頑なな親愛だった
我が儘なおれはそれが不満で仕方なくって
なのに臆病なおれはその生温さに満たされてた
おまえはおれを愛していたけど、おれはおまえに恋してたんだ
大丈夫、こんなこともう二度と言わない
今はもう、誰にも言えない
沈んだ太陽
(おれが16んときは何してたっけな)
小さな背中を見つめながらぼんやりと思ったのはいつだったか
高く燃える怒りの焔
水底に溜まる汚泥の憎悪
見え透けるほど簡単なその事実が、何故かあの時のおれには見えてなかった
今ならちゃんとわかる
おれは刹那が好きじゃなかった
(焦がれてたんだ)
果てなき空の彼方の太陽に。
アポロン
好きだ、と言われた
あの刹那が、このおれに向かってそう言ってきた
勘違いだよ、と言った
それは親愛の情で恋愛ではないと言った
幼少を餓えて生きた彼は感情に触れる機会に乏しかったに違いない
だから少しの優しさに過剰な反応を示してみせる
今がそのいい例だ
おれはこの少年を弟のように思っているだけなのに
勘違いだよ、と重ねて言った
そうか、と哀しそうに彼は頷いた
おまえが消えて おれに残ったこの感情
餓えてこそ初めて気付けるホントのこと
勘違いしてたのは おれだった。
グラス
無視して先を歩いても長いコンパスのせいで直ぐに並ばれた
聞こえない振りをすれば情けなく名を呼ぶ声が何度でも駆けてきた
気まぐれに名を声に乗せれば嬉しそうに寄ってきた
今はもう、俺が追うばかり。
永遠の鬼ごっこ