おまえがおれを愛してくれてたのは知ってるよ
でもそれは恋じゃあなかった
それは頑なな親愛だった

我が儘なおれはそれが不満で仕方なくって
なのに臆病なおれはその生温さに満たされてた

おまえはおれを愛していたけど、おれはおまえに恋してたんだ


大丈夫、こんなこともう二度と言わない

今はもう、誰にも言えない
沈んだ太陽
すれちがうひとたち
(おれが16んときは何してたっけな)


小さな背中を見つめながらぼんやりと思ったのはいつだったか

高く燃える怒りの焔
水底に溜まる汚泥の憎悪

見え透けるほど簡単なその事実が、何故かあの時のおれには見えてなかった

今ならちゃんとわかる
おれは刹那が好きじゃなかった


(焦がれてたんだ)


果てなき空の彼方の太陽に。
アポロン
おれとおまえを比べ、比べて (刹←ロク)
好きだ、と言われた
あの刹那が、このおれに向かってそう言ってきた

勘違いだよ、と言った
それは親愛の情で恋愛ではないと言った

幼少を餓えて生きた彼は感情に触れる機会に乏しかったに違いない
だから少しの優しさに過剰な反応を示してみせる
今がそのいい例だ
おれはこの少年を弟のように思っているだけなのに

勘違いだよ、と重ねて言った
そうか、と哀しそうに彼は頷いた


おまえが消えて おれに残ったこの感情
餓えてこそ初めて気付けるホントのこと



勘違いしてたのは おれだった。
グラス
餓えていた君と、飽きていたおれ
満腹だったおれこそが、愛と恋の些細な違いに気付けなかった
(刹ロク)
無視して先を歩いても長いコンパスのせいで直ぐに並ばれた

聞こえない振りをすれば情けなく名を呼ぶ声が何度でも駆けてきた

気まぐれに名を声に乗せれば嬉しそうに寄ってきた




今はもう、俺が追うばかり。
永遠の鬼ごっこ
おいて逝ったひと (ロク刹)
追悼の式で笑ったら殴られた


だってあいつが 「笑った顔が見たい」 と言ったんだ。

my mission for you
これが最後の機会だったから  (ロク刹)
(ヴェーダの人選は適確だな)


任務に忠実な完璧主義者
優しすぎる臆病者
生にこだわるちびっこ坊主
そして歩兵。


「‥‥なんだ?」
「ドーゾヨロシク、ってことだ」


なんとかマイスターとして、な。
サクリファイス
憂さ晴らしが出来ればそれで良かった、最初は。 (刹ロク)
「ロックン ハヨー!」
「おはよう相棒!――お。刹那、おはよう」
「セツナ ネボウ!」
「‥‥」
「どうした、刹那?」
「あんたはロックオンだろう」
「?そうだけど?」
「ロックン セツナ アサゴハン!」
「‥‥」
「ああ、今行くよ」
「‥‥」
「ほら、刹那」
「‥‥ああ」

「‥‥」
「‥‥」

「刹那」
「‥‥」
「『せっちゃん』で登録し「違う」
猫をも殺す
ハロが兄貴を『ロックオン』でなく『ロックン』て呼ぶ件 (ロク刹+ハロ)
「ロックオンッ!」


自分を呼び止める声にギギギと音がしそうなほどぎこちない動きで振り返る
ここで無視したり振り返らなかったり裸足で逃走したりした場合、自分がどうなってしまうかは学習済みだ


「これはご機嫌よう、刹那くん」
「何処に行く」
「ごめん、今からちょっと用が」
「‥‥」
「‥いや、デュナメスの様子を見ようかと」
「すべて整備士に任せきりのおまえがか」


おいおいなんだ人を小馬鹿にしたようなその態度
ティエリアの悪い影響が出てるんじゃないのか?


「ロックオン・ストラトス」
「その‥‥フルネームで呼ぶの、やめてくれ」


見上げてくる瞳も、名を呼ぶ声も、ぶつける感情も全部
おまえの全部で背筋に走る何かのせいで頭がおかしくなりそうだった
気づきたくない


「目を逸らすな」



だって刹那、仕方ないよ

先の見えてるものに熱を上げても意味なんてない。
落針の羅針盤
見誤った引き際 掴めない現在地と方位に舵がとれない (刹ロク)
2008.1.9  わたぐも