[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
シャットダウン
小狼君たちが来た。
きっともうすぐこの国ともお別れ。
「
やっと あいつらも来たな
」
戦場から離れると、また周囲の言葉がわからなくなった。
どうやらモコナがいる場所からだいぶ離れているらしい。
君はきっとそんなこと、とっくの昔に知ってたんだろうね。
「
‥‥おい
」
音がしたので窓の外から部屋の中へと振り返る。
無愛想な顔した彼がぶっきら棒に酒瓶を差し出していた。
オレはそれを受け取り、瓶のまま口をつける。
この国で与えられたこの部屋は、二人で使うには少し広かった。
でもそう思ったのは四人と一匹で旅する事に慣れていた最初だけ。
今ではすっかり馴染んだこの広さに苦笑する。
きっと、同室にいる彼が大柄だからだ。
黙々と酒瓶を煽る彼は、オレたちの間の机の上並んだ結びには手をつけない。
だからという訳じゃないけれど、オレは酒もそこそこに一つ手に取る。
ぱくりと齧れば中身は焼いた魚だった。
「
その調子で生魚も食えりゃ世話ねぇんだがな
」
こっちを見て呟く君の言葉は、昨日と変わらずわからない。
塩味の米に包まれた中身が魚でも、昨日と変わらずとても美味しい。
行儀悪く酒を煽ろうが、怒る人は何処にもいない。
(‥‥君にはいっぱいお世話になったねぇ)
不器用だとばかり思っていたのに、実は吃驚するほど器用だったり。
「なんで俺が」「面倒くせぇ」が口癖の癖に、オレが寝付けない夜は寝た振りしてくれたり。
この結びだってそんなたくさんのお世話の一種。
二人きりで落とされたから知ることが出来た君の一面。
忘れることが出来た オレという存在と背負った罪。
(―――でもこの状況とも もうお別れだよ)
だから開いた心を閉じてしまおう、何も望まなくても済むように。
さぁ戻ろう、蒼い瞳のオレに、望みなど無かった頃の自分に。
そして逃げよう、旅の理由を思い出して。
過去で思い出を塗り潰そう。
無かったことに、無かったことに。
変わったオレを 誰にも知られてはいけないから。
「
半年振りだ、小僧には剣の上達具合でも見せてもらうか
」
不敵に笑う君。
聞こえた音に微笑むオレ。
開いた心を さぁ 閉じよう
君の言葉が届く前に。
小狼君たちが来た日の夜の年長二人組。
夜魔ノ国は修羅ノ国近隣ではないとのことなので、きっとまた言葉通じなくなったんだろうなぁ、と妄想。
この半年で開いた心を閉じる準備期間。
管理人の脳内夜魔ノ国物語、起承転結の結の部分でした。(他には起しかアプしてないけどな!)(不親切)
2006.9.23 わたぐも