二年と半年は、頑張った。
でもそこで足がすくんでしまった。
やりたいことはある。
けれど掴めなかった時が恐いから、だからどうにもここから先には進めなかった。
かといって他の道を行くことなど頭に無くて、だからここに立ち尽くすしかオレには方法がなかった。
それを三回繰り返したら、四回目の一学期が来た。
置き去りのご挨拶
今日も、雨。
梅雨は当分先なのに、この数日は雨降りだった。
湿った机の表面と頬が擦れると生じる摩擦で、肌が少し痛む日。
雨はあまり好きじゃない。
でも落ちる雫が地を叩く音は嫌いじゃなかった。
(‥‥今日の授業は、もう終わった?)
机に伏せたこの体勢では周囲の音は聞こえても、状況まではわからない。
眼を開けてみても、自分の腕と机の面に囲まれた薄暗闇があるだけだ。
たゆたうのはループする思考。
触れず、歩まず、見ず、関わらず。
そんなふわふわとした夢心地でこの何年かを過ごしている。
誰の喋り声も物音も聞こえない教室には、雨音だけが静かに響いている。
どうせ自分に声を掛ける者などいない。もう一眠りしてから帰ろうか。
「──おい」
全ての不機嫌を威圧感に置き換えたような声がした。
「おまえも日直だろうが。俺にばっか仕事やらしてんじゃねぇよ」
言うが早い。
日直ってなんだっけ、と思ったのと同時くらい、何か薄っぺらくて硬いもの──出席簿の角で頭部を殴打された。
「―――‥‥」
遠慮も何も無かったその一撃は、空っぽのオレの中にとても響いた。
「‥‥‥おい、生きてるか?」
のろのろと顔を上げる。
その行動に、きっと自分の意志なんてなかった。
ただ引きずられるように不機嫌の音源を見た。
見上げた先、かなり高い位置には声音通り、不機嫌そうで、しかし何故か気まずそうな赤い眼があった。
「―――‥‥うん、とりあえずー」
オレはへらりと笑って見せた。
広い眉間にシワが寄った。
殴られた拍子に机で打った鼻の頭がジンとした。
二人だけの教室に、雨音がずっと 響いてた。
堀鐔ほも教師ズは堀鐔学園OBに違いない!設定。
そしてファイせんせーは留年生(4年目)設定。(奇抜通り越して異質)
2007.1.25 わたぐも