「ギギナ、気に入らなければやたらと引掻くあの癖はどうにかならぬのか?」
「うるさい」
「お陰で手の甲やら背やらが痛むのだが」
「知らん」
「それともお主が咒式で治療してくれるか」
「ふざけるな。何の義理があってわざわざ」
「冷たいな」
「自業自得だ。唾でもつけていろ」
「ではお主が舐めてくれるのか、再び」
「な、」
がっとこちらを向いたその表情が面白く喉で笑えば、あれほど不機嫌だった姫君の機嫌は平常値。
ひりひり
背を預ける相棒があっても 肩を預ける友など必要ない
何時裏切れらるとも知れない他人相手に 信頼の情をを寄せるなど馬鹿らしい
馴れ合いなど反吐が出る
そう思っていたのに
「どうした?」
鋼の瞳が真っ直ぐに覗き込む
故郷で見飽きたはずの色に力が抜けた
「‥‥なんでもない」
気付いた時には自分よりも広い肩が
恐怖ではなく安堵の対象へと摩り替っていた
クレオメ
(07.2.15)