まっすぐ





「あの眼鏡とどちらが良い?」



突然声が投げられた。

だが問われている意味がわからない。
荒い息のままで背後の男を振り返ると赤く腫れた目尻を白い指がゆるりとなぞった。

そして揶揄混じりに繰り返される次の台詞で言葉の意味を理解する。



「あの眼鏡と私、どちらの方が具合が良いかと聞いている」





―――汚された、気がした。



己の所有物であるあの男が。

半分だけ同族の男の、忌まわしく汚らわしいその手で。




今背後から貫かれているのは紛れも無く自分であるのに。




組み敷かれた瞳に宿った確かな殺意に満足そうな嗤みを浮かべた青い蝶。
その嗤みを目にして湧いた嫌悪とも憎悪とも知れない感情がギギナの理性を焼く。



罵声を浴びせようと開かれた赤い口からは意味の無い嬌声だけが高らかに上がり、
青い竜と炎が揺らめいた。






ガユ←ギギ←ユラの報われない直線関係。
しかしうちのギギナはどうも眼鏡が大好きらしい。


2006.2.11  わたぐも