「―――あ、もう軍に戻る時間だ」
通学鞄に教科書を詰める。
素早い彼の手際は軍で身に付いた。
前戦から退いたとはいえ、染み込んだ習慣は早々消えないのだろう。
「技術部も、楽じゃないんだな」
「軍隊だからね。僕が行かないと出来ないこともあるし」
「新入りのおまえが?」
「うーん、荷物運び、とか」
「ああ、体力馬鹿」
「酷いな」
教科書を詰め終わった鞄を持ち上げた拍子、スザクが雑誌の山にぶつけた。
バサバサと音を立てて、積み上げられていたルルーシュの雑誌が崩れる。
「、わ、ごめんっ!」
慌てて雑誌を拾い集める。
横から伸びてきた色白の細い指が手伝ってくれる。
僕と違い血の汚れを知らない、昔将棋を弾いた時のままの綺麗な指だ。
「いつもチェスで賭け事してるって聞いたけど」
「リヴァルかシャーリーだな…もうチェスでは賭けはしてないさ」
「“では”?なら今は何で?」
「そうだな、株価の変動、かな」
「頭脳派は違うね」
「羨ましいだろ」
「じゃあまた明日」
「ああ、学校でな」
自然に笑い合って、自然に挨拶を交わして、自然に扉が閉まる音を聞いた。
そうやって互いが感じた違和感を、互いに有限のスペースに閉じ込めたんだ。
全て知っていたのに?
見えないフリをする二人。
真面目な話、ルルは白兜=スザクに気付いて無いけど、スザクはゼロ=ルルって公式で気付いてるんじゃないかと思ってる。
2007.1.11 わたぐも