「雪だ‥!」


わぁ、と歓喜に叫び出しそうな、そんな声。
無邪気としか表しようのない声と笑顔で、スザクはぱたぱたと校庭を駆けていた。


「おまえ‥マフラーくらいしろ」
「平気だよ、鍛えてるから!」


おまえの体調は心配して無い、見てるこっちが寒いんだ。
ルルーシュはそういう意味で言ったのだが、仔犬のように駆け回るスザクの心情に水を差すような真似は無粋だと思い直す。
言ってしまえばきっと、それこそ正しく、彼は項垂れた仔犬のようにしゅんとなってしまうだろうから。









降り積もった雪の上に、足跡を残した。
白く綺麗な雪の色に。

ルルーシュがこちらに来る様子は一向に無いので、自分から彼の元に行く。
格好つけたがりなところは昔から変わらない。
だからきっと、雪遊びなんて様じゃないのだろう。


「ねぇ、ルルーシュ、一緒に雪合せ、」
「しない」


電光石火の拒否宣言には苦笑するしかない。


「‥‥雪が白いのは」


巻け、としつこく言われたマフラーを広げていると、ぼそりと声がした。


「ん?なに、ルルーシュ」
「いや、なんでもない」
「言ってよ。気になるじゃないか」


にこにこと微笑んで続きを促す。
根負けしたルルーシュが苦虫を噛み潰したような顔をしながらも口を開いた。


「雪は、白いだろう」
「うん」
「おまえ、その理由を知ってるか?」
「理由?」


きょとん、と翠の瞳が丸くなる。


「ルルーシュは知ってるの?」
「知らない」
「何それ」
「ただ、俺の知ってる奴が言った」


そういったルルーシュの目が、どこか、自分の知らないところを見ていた。

―――嗚呼、これは。


「『雪が白いのは、己が何色だったかを忘れてしまったからだ』、と」


―――聞かなきゃ良かった話題だ。


「‥ルルーシュも‥そう思ったんだ?」
「さぁな」
「‥なんだよ、それ」
「ただ、白い雪は綺麗だと思っただけだ」


昔から、そうだった。
彼はいつも綺麗なものを見ていたし、好きだった。


「‥‥早く、止んだらいいね」
「はぁ?さっきまではしゃいでたクセに」
「さっきはさっき。今は今」
「なんだ、それ」


不可解、といった顔をされたが、にっこりと笑って誤魔化した。




僕は自分を忘れたいから 僕という色で塗り潰した
昔とは違う色。
けれど綺麗でありたかった。
だから




「ココアが飲みたいなー」
「俺はコーヒーでいい」
「じゃあ、カフェに行こう」
「生徒会は」
「遅刻かなぁ?」





色違いの俺たちに まだ君は気づいて無いけれど






しろい いろ



C.C.の「雪が白いのは〜」は、白の騎士に繋がる気がして仕方が無い。むしろ繋げてしまって仕方が無い。


2007.1.4  わたぐも