ずっと 太陽 の下にいた。




「私にとってのお兄さま、ですか?」


唐突な質問に君の妹は小首を傾げた。
君との出会いは暗い土蔵の中だった

ちょっと気になって、と付け足すと、傾いた小さな頭が正位置に戻る。
君との再会は暗い地の底だった


裁判の判決を待つような静寂がやってくる。
君との出逢いも再会も、どちらも闇の中だった



「‥‥そうですね‥」


思案に沈む顔立ちは端整で、思考に優れた君の面影がちらつく。
出逢った時の俺は 高慢 で、光無い闇の中で君が見えた理由を理解しなかった


今、君の妹の瞼が開けば自分は発狂する。暗い確信が胸にある。
再会した時の僕は 傲慢 で、自分の力で君とまた相見えたのだと解釈した



君の妹が常に寄り添う闇は、一体どんな色なのだろう。
光無い闇の中で他人が見える筈が無かった

黒なのか
手探りでしか輪郭を確かめられない闇の中では不可能だった

白なのか
なのにどうして俺は触れる前から君の姿を認視できたのか



「お兄様は光です」


答えはたった一つしか存在しないのに
傲慢で愚かな俺は自分を軸に世界を見るしかできなくて
二度目のチャンスもふいにした



色も知れぬ闇の中、未だスポットライトが当たっていること。
それを君の妹は知っているのだろうか。

スポットライトを浴びただけで僕は自分が立派になった気がした

君にとって君の妹だけが唯一人。
咲き誇る花だと知っているのだろうか。

僕を向いた光は所詮
僕一人しか照らしていなかったのに



「スザクさんにとっての」


降り注ぐのが当たり前
だから太陽の光には寄りつかなかった

自分だけを照らしてくれる、白くぱっと輝く奇麗な色した蛍光灯
それに目が眩んで飛びついた




「お兄様は、どうなのですか?」




―――、ずっと



「 たいよう 」



 の 下 に、   いた  の に




「 ‥はは、 そんな の、 」






 あたりまえ で いまさら の事だった。よ、ね。







太 陽 の 上 に 立 つ
【ずっと太陽の下でぬくぬくしていた癖に、蝋燭の気持ちで吹き消した】



太陽の死骸を踏み締め立てば
焼けた空気を吸うしか術は残らぬ


2007.9.10  わたぐも







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