「なにやってるんですか、ロイドさん」

開けた扉は何に使っているのかも良くわからない、少し塵っぽい一室。
そこで彼は白衣を床に擦らしたまま三角座りをしていた。

「セシルさん、物凄く怒ってましたけど」
「‥‥承知しております」

花園の癒し、修羅場で鬼相。黄金の左拳はマッド眼鏡も黙らせる。それが特派の紅一点。
そんな彼女に連れ帰るよう言われたのだ、ブリタニア軍最強の白の騎士とて所詮一パイロット。従うしかない。

「じゃあロイドさん、戻りましょう」
「あのさ」
「はい?」
「君って結構、非道だね」
「えっと、上官命令なので」
「それでいうと、僕も君の上官ってことで、いいよね?」
「えっと、上官命令なので」

鸚鵡返しだった。

「魔法の言葉を思いついた」
「?」
「“セシル君のおにぎり”」
「‥‥」

翠の瞳はロイドをじっと見ていた。
正確には、ロイドの背後。そこは特派で言われる「限界の向こう側」。一般的には明後日と呼ばれる方角。

はぁ、と溜息が聞こえた。



「‥‥もう少ししたら、一緒に研究室に戻って貰いますからね」
「おーめーでーとぉー。それまで君も一緒にサボタァジュ」



橙の制服のお尻が、白くなった。






サボタァジュ



逃走上司と中間管理的役職の部下。


2007.1.11  わたぐも