「ランスロットの最終起動実験が終了しました。 そのテストデータです」

「‥んー‥」


「一部をプリントアウトしてきましたからナリタの件の始末書の参考資料にしてください」

「‥んー‥」


「ロイドさん?」

「‥んー‥」



「‥‥スザク君の容体ですが」



カタカタとキーボードを無機質に叩いていた指が止まる。 同時に生返事も。

セシルは上司が使用しているディスプレイに目を向けた。世話しなくタイプ音を響かしていたのに、作成途中の始末書の文面は一時間前と変わっていなかった。


「‥‥新しく淹れたコーヒー、ここに置きますね」

「ランスロットはどうだったの?」


聞きたいのはそんなことではないだろう。
視線はディスプレイに向けたまま。いつもなら微笑ましく思えるはずのこの男のそんな態度が、どうしようもなく頭にきた。


「‥‥ご自分で確認したらどうですか」


失礼しました。
心なしか扉を閉める音が大きかった。




「‥僕が動かないから、教えに来たクセに」


机に置かれたコーヒーからは湯気が立っていた。
その隣には雑誌ほどの厚さの実験データ。


「‥‥確かめなくても、わかってるよ」


結果など見るまでも無い。

デヴァイザーと機体の拒絶反応が原因ならば、精神撹乱の他に肉体にも何らかの不良反応が起こって当然だ。わかりやすい例なら嘔吐・痙攣、泡を吹くなどの体調不良が挙げられる。
第一、彼と機体の状態は自分達が随時観測しているのだから、なんらかの異常があればすぐにわかる。

しかし実際、モニタに表示されたのはパイロットの乱れた心拍と興奮状態を表すステータスで機体の方は至って正常。
想定し得ない異常事態に慌てて繋げたマイクが拾った音は、絶叫。

彼の怯えた叫びが耳にこびり付いてまだ離れない。



正気の彼は「ゼロを確保する」と言って通信を切った。なら原因は。



「僕の大事なパーツにあんな顔させたんだ。‥‥ゼロなんか、とびっきりの悪夢にでも襲われればいい」



乱暴にキーボードのエンターキーを叩いた。






エンター



セシルさんが何を確認しろと言ったのか、わかってるのにわからない振りのロイドさん。そんな特派が大好きです。
12話放送まであと数時間!!


2007.1.4  わたぐも