次元を超える初めての感触は冷たく暗いものだった
(……こんなのの先にある世界なんて、正直、いいものって感じしないねー)
みっともなく逃げ続けるのに今更、日の当たる場所なんて望まないけれど。
地に付いた足
響く音
触れる風はない
初めて吸った異界の空気は故郷とは違い、じっとり湿って重かった。
(…何か降ってる…水?)
ああ、これが雨か。あの国は雪ばかりだったから。
フードを被っててよかったと思ったけど、直ぐに別に良い所など無いと気付いた。
だって、濡れたって汚れたって、もう今更何も感じない。
閉じた瞼を持ち上げるとまず曇った空、そしてそれを切り取る灰色の建物が視界に入った。
薄暗い、二色の世界。
(…これじゃあ、俺の国とあんまり変わらないねー…)
色に乏しいあの国の白い大地と灰雲広がる空が意識せずとも重なった。
(……大丈夫だよー)
張り付いた無表情を軽い笑みに変えて
漏れそうな溜息を薄い問いに変えて
「貴方が次元の魔女ですかー?」
「誰だてめえ」
異界で聞いた最初の音はガラの悪い声。
初めて聞く力強さを秘めたその声に 思わず視線を落とすと
どれだけ濡れても消えない炎の色が 機嫌悪そうに俺を舐めた。
モノクロオムの街の中、君だけは色を持
っていた
必然の出逢いは見知らぬ色を伴って。
雪国はきっと色に乏しいと思ったので。日本は色数多いので対照的に。
2006.8.5 わたぐも