好きの反対は無関心

『俺には関係ねぇ』

ならば「無関係」と「無関心」は、同じこと?
違うよね。
だって「無視」は相手の存在を「知覚」してこそ成り立つものだから。

『一番嫌ぇなんだよ』

なら、「嫌い」は?
嫌いの反対は?

うん、わかってる。
嫌われて清々した。

だってそうでしょう?
彼と自分は最後は殺し合う。彼にその気がなくて自分はそうする。しなくてはならない。
オレの願いはその先にこそ存在する。
だから大丈夫、オレは今日も笑える。

だって君はオレが嫌い。
だってオレは、君が。








「‥‥あのさ」
「なんだ?」


生きる目的をオレに下さい。


「――ううん、なにもないよ」


駄目。そんな事を言えば。

(また、嫌われる)

そう思った記憶は未だ自分の中で新しい。
一年なんて、己が生きた年数の1パーセントにも満たない期間。

笑ってしまう。
そんな一瞬の好嫌を選好みする自分を。
既に自分は嫌われているくせに、未だ動揺する自分を。

嘲笑う。
嫌われたのならそこが底辺。
好きも嫌いも全ての想いの落下点。
これ以上落ちることはない。
そう、これ以上も以下も。


「なんか言ったか?」


堕ちることなど無い。


「なにも?」


無いのに。


「そうか」


それっきり。
いつもみたいな悪態だって吐いてくれない。

いっそ出逢ったあの頃のように足蹴にしてくれれば良い。
土足でずかずか踏み込んで散々に人の内側踏み荒らしてくれれば良い。

嫌いなんでしょう?
一番嫌いな生き物なんでしょう?

だったらそういう態度で接してよ。
生温い優しさなんて向けないで。
君がそうやって在りもしない可能性を示唆するから、オレは何時になっても未練がましく踏鞴踏む。

嫌われたいのに嫌われたくない。
嫌われたくないから嫌われたい。

理由は明確なのに、知るのが怖くて蓋をした。
蓋をした時点でソレが何か知っていた。


そうだよオレは、全部知っていた。








『そんなに死にたいなら俺が殺してやる。だからそれまで生きてろ』


‥‥ああ。そう。そうなの。
君が、殺してくれるんだ?

思わず笑みが零れた。


―――でもそれって結局 オレが逃げる今と 同じじゃない。








『動くな』
『逃げないよ』
『まだ動くな』



ならいつ 動け というの?
いつまで ここにいろ っての?

答えられないくせに押しつけがましいその理由。
偉そうな顔して駄々だけこねて 万人が納得する意味は何処にあるんだよ。


嗚呼 もう全部が 畜生 だ。








――ねぇ、黒鋼。


生きる理由を与えた気なら、その理由で生きる意味まで教えてよ。








生きる理由を与えて、生きる意味を教えて





自重に任せた落下の終わりを君は告げた
だからオレはまた、自力で這い上がるしかなくなった


2007.11.15  わたぐも