91.爽やかすぎる朝
目が覚めた。
嗚呼、爽やかな朝だなぁだってどこかのドラッケンが狭い寝台の上で暑苦しい腕をもって俺を抱き締たまま
添い寝していないんだもの!
嗚呼本当、なんて爽やかな朝なのだろう。
少し高い角度から差し込む朝日に照らされ二度寝寸前の心地良さに酔いしれていると、
目の前に転がる携帯の不在着信を知らせるランプが点滅しているのに気が付いた。
寝ぼけ眼を擦りながらも開いた画面に映し出される履歴を見て、俺はもともと無い血の気が根こそぎ引く音を確かに聞いた。
戦闘時でも滅多に無い脊髄反射で短縮ダイヤルを繋ぐ。相手が名乗る前に俺が叫ぶ。
「ギギナッ、悪い今起きたッ!」
『…そうか』
「ごめん、本当にごめんッ!12時半迄には絶対に行くからッ!!」
『…応』
それだけ言って俺は弁明の間も惜しいとばかりに通信を切った。
焦って寝台から飛び降りた拍子に角で足をぶつけたがそんなことには構ってられない。
朝食どころか簡易珈琲を入れる暇も無い。
仕事の打ち合わせじゃなかったのは幸いだが、仕事じゃないからこそギギナに
何を言われるかわかったのもではない。
「ああもう畜生、爽やか過ぎる朝だよ全くッ!!」
慌しくシャツを羽織ったら裏表が逆だった。
同時刻。
とっくに過ぎたモーニングタイムを軽食店で一人過ごした寡黙なドラッケン族が
寝坊の為に慌てて連絡を寄越した青年を思って悪態どころか安堵の溜息を付いたのは、
彼の愛しい恋人のみが知らない蛇足的事実。
待ち合わせ時間を過ぎても来ない几帳面な相棒を過保護なギギナさんは割と心配したようです。
ガユスだって寝坊くらいするさ。
2006.1.21 わたぐも