84.聴こえる





眼が覚めた。
外が暗いからまだきっと夜中。


「……っは…」


俺が殺した人間の声。
薄暗い仕事の余韻。

俺を追いかけてくる音が聞こえたから恐くなって眼が覚めた。


速くなる心音。
汗の落ちる音。
渇く喉の掠れた呼吸。

音音音。
聞こえる全てが俺を追い詰める。


「…っ…!」


眼が覚めた。
声が聞こえたから眼が覚めた。


「夜泣きか、貧弱眼鏡」




眼が覚めたから こいつの声が聴こえた






逃げたガユスを追わないギギナを書いてみたかった。


2006.5.7  わたぐも