64.繰り返し







『おまえさ、許婚いるじゃん?』
『何故今あれの話をする』
『仲良くしろよ』
『黙れ』
『ちょっとは頭上がるようになるといいな』
『うるさい』
『あ、子どもは計画的にだぞ?』
『ガユスッ!』
『そう呼んでくれたら嬉しい』


たとえ僕がもう二度とその声を聞けない場所に佇んでいようとも


『だっておまえの遺伝子半分持ってるんだぞ?』


君が僕の名前を呼ぶ


『きっと綺麗で強くて我が儘で』


その繰り返しが僕の全て


『猫が怖い強がりな優しい哀しい弱い子どもだよ』


その数だけが僕の幸福


『‥それでは貴様とは似ても似付かぬ子ではないか』
『そりゃ似てないさ』


たとえ 僕が


『だから俺はそうなりたかったんだ』


もう 二度と


『‥そんな名前など付けてやらん』


君が呼ぶ その声に


『えー?』


呼吸すら 返すことが 出来なくても


『―――似ていない者をどうしてその名で呼べるんだ』


繰り返される その行為だけ が


『はは、おまえのケチは俺似だな』



君の僕が
生きた







デイドリーム(=空想)シリーズ第一弾。
今回はガユス余命三ヶ月設定でお送り。


2007.07.28  わたぐも