45.日常
今日も事務所は依頼ゼロ。
そしてそれに正比例して残り資金も限りなくゼロ。
四字熟語で表すなら“経営危機”。
なのにギギナの血縁は無益・無駄に増えてゆく。
仕事が無いのでこれといってすることも無い。
俺は無意味に領収書の整理を始めた。
何故か本日ご機嫌なギギナは机を挟んで俺の向かい側、愛娘に腰掛けてネレトーを磨いている。
事務所の経営状態について悪態をついてやろうとしたものの、そのご機嫌具合に出鼻を挫かれた。
(……まぁ、今日くらいは……。)
その辺、俺もまだまだ甘い。
ギギナから手元の領収書へと帰還する途中、俺の視線は
机の端にさり気無く置かれた見覚えの無い紙切れを捕らえる。
そこのに数字の 0 が5つほど並んでいるのはきっと人間の都合で植樹・伐採され、
あまつさえこんな紙切れになるという末路を辿った人工樹の祟りに違いない。
そして鈍い金の輝きを放つネレトーに見慣れない咒式具のオプションが追加されているのはきっと
ギギナ次元と三次元の間にある越えられそうで越えられない時空の歪みかなんかの影響に違い無い。
………………前言撤回。
「オイ、コラ、そこの社会適応能力皆無な女吸引戦闘狂のギギナ」
「なんだ、年中無休終日不景気面の万年薄幸貧弱眼鏡のガユスよ」
こちらアシュレイ・ブフ&ソレル咒式事務所。
随時至急緊急にご依頼受付中。
ギギナとガユスの日常って痴話喧嘩な感じ。
05.2.15 わたぐも