34.森
「サドンデスサバイバルでもする気かおまえは!」
俺の怒声に不快そうに鼻を鳴らす男が必要以上に美形である事実が鼻に付く。
「おまえが『上位咒式の訓練にぴったりの場所がある』って言うから俺はこんな辺境まで!」
「まさにそうではないか、何が不満だ」
「全部だ!!」
双方、間違ったことは言っていない。
確かにここなら巨大咒式だって紡ぎ放題だし、ギギナの強化咒式だって使いたい放題だろう。
けれど。
「異貌のものどもがうじゃうじゃいるような森で安心して訓練も何もあるか!」
「貴様、それでも一応は咒式士だろうが。それくらい」
「訓練と本番は違う!」
「当たり前だ。だが新入りの貴様にしては良く知っていたな」
しばらくはぎゃあぎゃあと喚いていたが、ギギナは溜息一つで俺の小言を黙らせた。
「嫌ならこの場で尻尾を股に挟んで震えていろ」
そう吐き捨て、すたすたと先行くギギナはこちらを振り返りもしやがらない。
「言っとくけど!」
腹が立つから現状精一杯の不満を声を大にして叫んでやった。
「おまえが一緒じゃなけりゃこんな森、俺は絶対に入らないんだからなっ!!」
その日の戦闘訓練で俺はどういうわけか、
ギギナに見事としか言いようの無い一撃加えることに成功した。
黄金時代話
自惚れてもいいのだろうか、とギギナ葛藤
2010.08.25 わたぐも